徳島地方裁判所 昭和６２年（わ）２５１号 判決
本籍と住居
徳島市八万町上福万八二番地
会社役員
福本繁
昭和一一年六月四日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官水野美鈴出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年六月及び罰金三二〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
（罪となるべき事実）
被告人は、徳島市八万町上福万八二番地において「福本化学養菌園」の名称で椎茸種菌の製造、販売業等を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、
第一 昭和五八年分の実際の所得金額は五、五四五万七、〇二二円であり、これに対する所得税額は二、七〇九万一、七〇〇円であるのにかかわらず、売上げの一部を除外するなどの不正の行為により所得を秘匿した上、昭和五九年三月一二日、同市幸町三丁目五四番地所在の所轄徳島税務署において、同税務署長に対し、昭和五八年分の所得金額は二、九七万八、四一五円で、これに対する所得税額は一二万五、四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の所得税二、六九六万六、三〇〇円を免れ、
第二 昭和五九年分の実際の所得金額は七、一二〇万六、七五一円であり、これに対する所得税額は三、五二三万八、九〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正の行為により所得を秘匿した上、昭和六〇年三月一五日、前記徳島税務署において、同税務署長に対し、昭和五九年分の所得金額は四〇六万九、七九二円で、これに対する所得税額は二三万八、七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の所得税三、五〇〇万二〇〇円を免れ、
第三 昭和六〇年分の実際の所得金額は九、七八九万三、一二八円であり、これに対する所得税額は五、三三七万二、三〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正の行為により所得を秘匿した上、昭和六一年三月一五日、前記徳島税務署において、同税務署長に対し、昭和六〇年分の所得金額は四二六万二、八四〇円で、これに対する所得税額は二五万五、三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の所得税五、三一一万七、〇〇〇円を免れ
たものである。
（証拠の標目）
判示全事実について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書
一 被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書一七通
一 被告人作成の申述書一一通
一 福本満智子の検察官に対する供述調書
一 福本満智子の大蔵事務官に対する質問てん末書二通
一 福本富次郎の検察官に対する供述調書
一 福本富次郎の大蔵事務官に対する質問てん末書二通
一 近藤多嘉雄の大蔵事務官に対する質問てん末書
一 福本満知子作成の「人件費の支払について」と題する書面
一 大蔵事務官作成の現金調査書、普通預金等調査書、定期積金調査書、積立定期預金調査書、定期預金調査書、中国ファンド等調査書、貸付信託調査書、投資信託調査書、割引債券調査書、国債調査書、定額貯金調査書、売掛金調査書、たな卸商品調査書、建物調査書、車両運搬具調査書、工具器具備品調査書、買掛金調査書、事業主勘定調査書、農業所得調査書、不動産所得調査書、利子所得調査書、雑所得調査書、売上調査書、期首商品たな卸高調査書、仕入調査書、期末商品たな卸高調査書、租税公課調査書、荷造運賃調査書、水道光熱費調査書、旅費交通費調査書、通信費調査書、広告宣伝費調査書、接待交際費調査書、損害保険料調査書、修繕費調査書、消耗品費調査書、福利厚生費調査書、減価償却費調査書、冷蔵保管料調査書、原木代調査書、弁護料調査書、印刷費調査書、雑費調査書、給料賃金調査書、損害賠償金調査書、研修費調査書、Ｂ／Ｓとの不突合額調査書
一 大蔵事務官作成の査察官報告書
判示第一の事実について
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書（自昭和58、１、１至同昭和12、31）
一 押収してある昭和五八年分の所得税の確定申告書一通（昭和六二年押第三五号の一）及び昭和五八年分の所得税の修正申告書一通（同押号の二）
判示第二の事実について
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書（自昭和59、１、１至同昭和12、31）
一 押収してある昭和五九年分の所得税の確定申告書一通（同押号の三）
判示第三の事実について
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書（自昭和60、１、１至同昭和12、31）
一 押収してある昭和六〇年分の所得税の確定申告書一通（同押号の四）
（法令の適用）
一 罰条 判示各所為 所得税法二三八条
一 刑種の選択 懲役と罰金とを併科
一 併合罪の処理 刑法四五前段、四七条一項本文、一〇条、四八条一項二項
一 労役場留置 刑法一八条（罰金刑につき）
一 執行猶予 刑法二五条一項（懲役刑につき）
よって、主文のとおり判決する。
（裁判官 山本慎太郎）